導入実績

CASE
2020-01-10

公益財団法人パナソニック教育財団 様
研究代表者 中橋 雄 先生(武蔵大学)

ペア・グループ学習を中心とした授業の進め方について、改善のアイデアを得ることを目的の一つとした共同研究で使用していただきました。

フィールド

茨城県古河市の小学校5、6年生の以下の四つの授業においてHylable Discussion(当時の名称は議論評価サービス)が用いられ、その結果について各担当の先生からの報告がありました。

授業1「句会を開こう」(国語)
自分で作った俳句をグループ内でお互いに伝え合いました。その際話し手は、自分の思いや考えが俳句の聞き手に適切に伝わっているかを意識し、どんなイメージが伝わったかについて聞き手からフィードバックを得ました。

授業2「5W1Hの視点で新聞記事を読み取り、記事の感想を伝え合う」(国語)
自分が選んだ記事に関する感想を、「5W1H」を含めながらグループの4人で伝え合い、ニュースについて考えを深めました。

授業3「和の文化を受けつぐ」(国語)
グループごとに決めた「和の文化」(和室など)の特徴や観点を確認し、タブレットを用いてインターネットでそれらについて調べました。調べた内容をワークシートに記録し、グループ内で話し合いました。

授業4「四角形と三角形の面積」(算数)
授業支援アプリを使って、クラス全員で共通の問題(面積を求める図形の画像)を共有しました。各自でその問題の解決を行った後に、グループおよびクラス全体で議論しました。

導入の目的

パナソニック教育財団と研究グループは、学習者同士の対話の様子(実際にどのような対話が行われているか)を踏まえた上で、どのようにして対話を促せば学習者は深い学びに到達できるのかを重要な研究課題として取り上げました。なぜなら、学習指導要領(平成29 年告示)を受けて、ペア・グループ学習において学習者同士が教え合い学び合う対話的な協働学習を行うことが重視されているものの、その指導方法は十分に確立されているとは言えないからです。同研究グループは、一見、対話が行われているように見えて、実はそれが学習の目的を達成させるようなものになっていない状況も見受けられることを指摘しています。

成果

授業1「句会を開こう」(国語)
発言者が説明不足であったり発言に苦慮したりしている場面では、周りの児童からの割り込みが話し合いの活性化に効果をもつことがあると分かりました。議論のルール設定にこの結果を生かせる可能性が発見できました。

授業2「5W1Hの視点で新聞記事を読み取り、記事の感想を伝え合う」(国語)
「発言に消極的な児童」と「話合いの進行に意欲を示すリーダー的な児童」が同じグループになるように編成した結果、グループ全体に相づちを含めた積極的な発言が見られました。「発表者の発言を最後まで聞く」だけでなく、「途中で確認をする」、「発言を補助する」など聞き手側の積極的な発言機会もあることで、議論が活発になることが分かりました。

授業3「和の文化を受けつぐ」(国語)
児童たちは、話し合いの傾向(発言の量、他者への割り込み、会話の盛り上げ)のバランスが取れていることが分かりました。これらは、話し合いを行う上でのルールやマナーが定着しているかどうかの一つの指標であるとも考えられました。

授業4「四角形と三角形の面積」(算数)
算数科では「まず…。次に…。最後に…。」のように考えを発表する際の型が決まっている場合が多く見られます。しかし、型に沿って発表したり、それを聞いたりするだけでなく、お互いの考えが伝わっているかどうかを意識して話し合うために、積極的にリアクションをして「割り込む」機会が増えることも望ましいと分かりました。

このような事例を通して、先生たちは「議論に関するデータ」から授業改善のアイデアを得ることができると示されました。このようなデータを得ることは、学習者の話し合いの内容や様子を詳細に把握するだけでなく、先生の授業改善、さらには授業力向上にも繋がる可能性があると考えられました。

 

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