現代のビジネスの環境において、コミュニケーションの質の向上は重要である。とくに、対面やオンラインが混ざりあった環境で会議・議論・相談といった日々のコミュニケーションを効果的に行うことの重要性はますます増している。
そこで、シリーズ「会議が見える〜音環境分析でコミュニケーションを豊かにする〜」では、これまで10万人以上の話し合いを分析してきた音の専門家が会議を解説する。
Vol.22では、会議とウェルビーイングについて調査された論文を紹介し、会議と疲労感の関係について解説する。
本記事は、ニッキンONLINE PREMIUMで連載中の記事の転載です。
※媒体社の許諾のうえ転載しております。
会議は本当に疲れるのか?
現代の組織では、会議はいたるところにあります。意思決定、アイデア出し、交渉、商談、さらにはレクリエーションの企画など、目的は多岐にわたります。組織運営やプロジェクトだけでなく、多くの組織で会議は欠かせないものになっています。
事前に準備したり、その場でいろんな交渉をしたり、会議後に議事録を準備したりと、様々な業務が必要ですし、会議自体も神経を使うので、ストレスに感じる方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、会議と疲れに着目して、最新の調査や研究をもとに、その実態を探ります。
社内会議の実態:管理職 と 一般社員 の比較
まずは、世の中の会議の全体的な傾向を調べて行きましょう。2023年に行われた国内企業を対象とした調査 [1] が、最近の調査であり、従業員100名以上の企業500名を対象として調査しているので網羅性がありそうです。しかも、社内会議に着目していて興味深いですね。
- [1] パーソルプロセス&テクノロジー株式会社「社内会議・社内ミーティングに関する実態調査」2023. https://www.persol-bd.co.jp/news/ppt/20230329/
この調査は管理職と一般社員に分けて、会議の様々な側面について調査をしています。
一方会議後は、議事録作成が一番長く、管理職が平均21.8分、一般社員も平均16.9分かけています。
これらからは、管理職の方が一般職員より多く・長く会議に参加している、想像通りの結果だといえそうです。
このように、一見管理職の方が負担が多そうに見えますが、感じるストレスについては、会議前・会議後のどちらのタスクについても管理職の方が低いようです。もしかしたら、管理職の方が「自分が必要だと感じている」という意識が強いのかもしれません。
どんな会議は疲れる?
このように、会議にまつわるタスクの大変さや、会議によって仕事が中断されることによる影響はいくつか研究されているのですが、会議の参加自体がどれぐらい疲れるのか、については、あまり研究がなかったようです。今回はこれを真正面から調べた研究を紹介します。
2023年に発表された論文[2]では、大学で管理業務をしている職員をターゲットに会議の参加回数や会議の長さ、そして主観的な疲れ度合いを記録してもらい、それらのデータを収集して分析を行いました。
- [2] A. Luong and S. G. Rgelberg, Meetings and More Meetings: The Relationship Between Meeting Load and the Daily Well-Being of Employees, Group Dynamics: Theory, Research, and Practice, Vol. 9, No. 1, 58 – 67, 2005.
ここで明らかになったことは、会議の参加回数が多いほど疲労感が高くなるということです。さらに、会議の回数が多い日は業務の負担感も統計的に優位に大きくなっていました。一方で、会議の参加した合計時間や性別、勤続年数などは疲労感との相関はみられませんでした。
まとめると「会議が長いことより、会議が多いことの方が負担が大きくなり、しかもそういう日は通常業務も負担が大きく感じる」ということです。
もちろん、この結果はアメリカの大学職員でしか調査していないので、日本の一般企業で当てはまるかは未知数ですが、何度も会議で自分の業務が中断されたら疲れる、というのは直感的には納得できそうな話ですね。
ノー会議デーを作る
このことから、だとえ短い会議だとしても予定をいれない「ノー会議デー」を作ってみるのは良いかもしれません。いくつかの企業は導入しているようです。
まずは、実験のように、会議の回数と「主観的な疲れ度合い」を記録して、本当に会議の回数と疲れに相関があるのか調べてみてはいかがでしょうか。
ニッキンONLINE PREMIUM 2025年5月19日掲載 (リンク)
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この記事を書いたメンバー

水本武志
ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。生物研究プロジェクト Project Dolittle もやってます。