【転載記事】Vol.2 アイデア出し会議を見える化しよう | ターンテイキングに着目して

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新型コロナウイルス感染症の広がりから、テレワークなど働き方の変化に伴い会議や議論も、これまでの対面中心からオンラインによる実施が増えている。しかし、企業活動において、会議・議論・相談など、音声によるコミュニケーションはいたるところに存在し、質の向上が求められている。これまで4万人以上の話し合いを分析してきた音の専門家が会議を解説するシリーズ「会議が見える〜音環境分析でコミュニケーションを豊かにする〜」。Vol.2では、新しい製品や企画を考える「アイデア出し会議」の質を向上させるための見える化を解説する。
アイデア出し会議のむずかしさ

「アイデア出し会議」はアイデアを多く出すことが必要で、参加者全員が様々な観点から発言することが大切です。しかし、心理的安全性の低さや、メンバーの多様性の乏しさから発言する人に偏りが出ることがよくあります。ブレインストーミングも、実は発言がしづらくなるという指摘もあるようです。

ここでは、「ターンテイキング」という概念を使って「アイデア出し会議」を見る方法について説明します。

ターンテイキングとは?

ターンテイキングとは会話分析の分野で広く使われる概念で「会議中に発言する人が順番に入れ替わっていくこと」を意味します。すごろくやトランプゲームのポーカーのように、自分のターンが回ってきたら何か行動して、他の人にターンが移り変わっていくイメージです。

ターンテイクングのパターンを調べると、アイデア出し会議でどのように議論が進んでいるかがわかります。例として、ハイラブルのシステムで社内の会議を可視化した例を2つ紹介します。下図の丸は参加者を表し、発言回数が多いほど大きく表示しています。また、参加者間の議論の回数が多いほど、それをつなぐ線が太くなります。

ハイラブルで分析したターンテイキングのパターン

左側は「司会者タイプ」です。青の司会者が全員のターンテイキングの中心になっていることがわかります。全員に発言する機会はありそうですが、司会者が場を支配している「行儀の良い」会議で、司会者を介さない議論は少なそうです。この場合、参加者同士の議論を促すとよいでしょう。

一方、右側は「仲間はずれタイプ」です。青・オレンジ・紫の3人はターンテイキングが盛んですが、黄が入れていません。特に紫とのターンテイキングが少ないので、黄と紫のやり取りを促すとよいでしょう。

理想的パターンは「全員参加タイプ」で、全ての参加者を繋ぐ線が同じ太さになった状態です。こうなれば、参加者の全ての組み合わせで議論したので、そのグループで出せるアイデアはほとんど出尽くしたといってよいでしょう。

ハークネス法で自分の会議を見える化しよう

ターンテイキングの図は、手作業で書くこともできます。やり方は簡単で、紙とペンがあればできます。会議前、白紙に参加者の名前を円状に書きます。会議が始まった後は、話し手が次の人に移るたびに、移る前後の参加者の間に一本の線を引きます。これを繰り返すと、ターンテイキングが多い参加者間には多くの線が引かれるので、パターンが見えるというわけです。

この方法は、アメリカの有名な寄宿舎学校Philips Exeter Academy で使われているハークネス法と呼ばれる方法で、日本語の書籍「最高の授業:スパイダー討論が教室を変える」(アレクシス・ウィギンズ著)でも「スパイダー討論」という名前で紹介されています。この書籍では、より詳しい記録の方法も紹介しています。

こうして記録したパターンから、自社のアイデア出し会議で参加が少ないペアを探してみてはいかがでしょうか。もし参加できない人がいたら、その人が安心して発言できるような、心理的安全性を高めるための手を打つことで、きっといいアイデアが生まれるでしょう。

ニッキンONLINEプラス2022年5月27日掲載 (リンク)

この記事を書いたメンバー

水本武志

ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。最近生物研究プロジェクト Project Dolittle も始めました。

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