Vol.3 会議の多様性とバランスゲーム【ニッキン転載記事】

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新型コロナウイルス感染症の広がりをきっかけとしたテレワークなど働き方の変化に伴い、会議や議論も、これまでの対面中心からオンラインが増えている。企業活動において、会議・議論・相談など、音声によるコミュニケーションはいたるところに存在し、質の向上が求められている。これまで4万人以上の話し合いを分析してきた音の専門家が会議を解説するシリーズ「会議が見える〜音環境分析でコミュニケーションを豊かにする〜」。Vol.3では、会議の多様性と、それを改善するゲームについて解説する。

本記事は、ニッキンONLINE PREMIUMで連載中の記事の転載です。
※媒体社の許諾のうえ転載しております。
なぜ会議に多様性が必要なのか?

会議では議題についてさまざまな視点から検討する必要があります。しかし、経験や能力、考え方が似た人が集まってしまうと、考えから抜け落ちてしまう「盲点」も似てしまいます。英「タイムズ」紙の第一級コラムニストのマシュー・サイド氏の著書「多様性の科学」では、国中から有能な人材を集めたアメリカの中央情報局(CIA)ですら、組織に多様性がなかったためにテロの兆候を見逃してしまったと指摘されています。

多様性を補うために、たとえ議題の専門家でなくても、他の分野の専門家も参加して議論することが効果的です。「他の分野の常識」の声が見逃していた盲点を見つけたり、新しいアイデアが生まれるきっかけになるからです。

会議と飲み会の不均衡なコミュニケーション問題

多様性のあるメンバーが揃っても、少人数だけが発言していて、他の参加者が抑圧されていては目的が達成できません。そのようなケースはどんな会議でも起こっていて、書籍 「多様性の科学」 ではこのように指摘しています。

研究を始めた彼女がすぐに注目したのは順位制だった。1人か2人の人間が主導権を握ると、その集団(特に内向的なメンバー)の視点や意見は抑圧される (中略) これは日常的に見られる傾向で、「不均衡なコミュニケーション問題」と名前もついている。「面白いのは、自分ばかり話している人がその傾向に全く気づいていないことです」とトンプソン教授は続ける。「彼らは『全員が平等に話している』『平等な会議だ』と言って譲りません。
p144 より引用。

もちろん、こういった現象は会議の場だけではありません。ヤッホーブルーイング社の飲み会平和化プロジェクト「チームビールディング」で行われた飲み会実態調査では、上司と部下の会話量の調査が行われました。その結果、飲み会での不均衡なコミュニケーション問題が明らかになったのです。

  • 上司から見た会話量は、上司が45%、部下が55%
  • 部下から見た会話量は、上司が63%、部下が37%

つまり、上司は「部下の方が多く話している」と思っているが、部下は「上司の方が多く話している」と考えている。大きな齟齬が起こっているのです。

発話のバランスを揃えるバランスゲーム

この誤解の原因は、自分や相手を客観視する「メタ認知スキル」の不足にあります。「おたまじゃくし研究所」では、この誤解を楽しめるゲームを開発しました。その名も「バランスゲーム」です。

ルールはとても簡単です。チーム対抗戦で「参加者の発話量(時間)の差が少ないほうが勝ち」というだけです。

ルールは単純ですが、ゲームはとても複雑です。制限時間を10分間とし、4人が会話をスタート。4等分して1人あたり2分30秒話せばよいのですが、そううまくはいきません。仮に、参加者のだれかが3分発言してしまったら、他のメンバーも相手にかぶせてでも3分話すようにしないといけません。

つまり、 自分の発話量を把握すると同時に、他の人の発話量を把握して、発話が少ない人に発言を促すということを同時にしないといけないのです。

私たちはこのバランスゲームを何度も行っています。初対面同士の自己紹介の場でもバランスゲーム形式にするだけでとても盛り上がって、参加者同士が交流を深められたのです。これは普段は起こりにくい「会議のメタ認知」を意識するゲームになっているからでしょう。

ハイラブルの製品を使えば自動計測できますが、複数の時間を測れるストップウォッチを使えばこのゲームは進められるので、ぜひ遊んでみてください。

ニッキンONLINEプラス2022年6月27日掲載 (リンク)

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この記事を書いたメンバー

水本武志

ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。最近生物研究プロジェクト Project Dolittle も始めました。

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