話し合い分析のオンラインワークショップをプロファシリテーター・議論の研究者・ハイラブルが協力して実験しました

公開日



今回の記事は、オンラインワークショップの話題です。 先日、日本ファシリテーション協会(*)が開催しているイベント 「ファシリテーション・サミットOSAKA 2021」で、ハイラブルのWeb会議の見える化サービス Hylable (ハイラブル) を使った、オンラインのワークショップを行いました。

このワークショップは、プロファシリテーター、議論の研究者、そしてハイラブルで作った新しい話し合いデータ分析のオンラインワークショップです。参加者のみなさんにとても楽しんでいただけたので、このワークショップの経験をご紹介します!

(*) ファシリテーションの普及を行っている NPO 法人。略称はFAJ

参加者のようす

どんなワークショップ?

今回のワークショップは 「ファシリテーション×AI ~AIをファシリテーションに活用する!~」でした。 プロのファシリテーターである林加代子さん一木茂さん、名古屋工業大学の教授で市民参加型の議論や合意形成をサポートするAIを研究している白松俊先生、そしてハイラブルの水本武志でワークショップを行いました。

白松先生と水本は出身研究室が同じで、以前からファシリテーションや議論の分析に関する研究を一緒に行っていました[1]。 そんな研究の中で出会ったプロファシリテーターの林さん、一木さんと4人で新しいワークショップを作り、ファシリテーションサミットで実際に運営する実験を行うことになったのです。

[1] 幸浦弘昂, 白松俊, 水本武志, 林加代子. “音環境分析と音声認識に基づく議論振り返り支援インターフェース”, 情報処理学会 第82回全国大会講演論文集, 5ZG-08, 2020年3月

テーマが「ファシリテーション×AI」なので、私達は 話し合いのデータを分析するという活動をワークショップの中心に置くことにしました。 というのも、「ファシリテーションを勝手にうまくやってくれるAI」はまだまだ生まれないからです。仮に生まれたとしても、それを使いこなすにはデータを読める必要があります。つまり、データが読めることが重要なのです。

そこで、参加者のみなさんには Hylable が生み出す話し合いのデータを分析する体験を提供して、客観的にファシリテーションのデータを振り返るとどんな事がわかるだろうか?ということを考えるきっかけにしてもらおうと考えました。

どんな内容?

今回は次のような流れでワークショップを行いました。

  1. ファシリテーション×AIの基本を解説 (白松先生、水本)
  2. Hylable の接続テスト
  3. グループに分かれて、Hylable を使って難しい話題について話し合う
  4. Zoom で自分のグループの 話し合いデータを使って振り返る
  5. Zoom で他のグループの 話し合いデータから、「そのグループがどんな話をしていたか」を推理する
  6. Zoom で2つのグループをあわせて答え合わせを行う
  7. Zoom で元のグループに戻って全体の振り返りを行う

データ分析の最初のステップとして、内容を分かっている自分たちの話し合いを振り返ります。これでデータの読み方に慣れてもらいました。次のステップでは、その慣れたスキルを生かして他のグループの話し合いデータを分析して、データから実際の状況を推理するという、データ分析に重要なスキルを体験してもらいました。

分析するのは 3 の「難しい話題」の部分だけなので、 Hylable はそのワークだけに使い、あとは参加者のみなさんが慣れている Zoom を使いました。ちなみに今回の「難しい話題」は架空の街でお祭をやるかどうか?という話題にしました。

ステップ 4〜7 の Zoom ブレイクアウトルーム中にみなさんの議論を聞いて回ったところ、とにかくみなさんとても楽しそうにワークショップに参加されていたことが印象的でした。メインルームに戻った瞬間に「面白い!」と言ってもらえたときは、やってよかった!と運営者のみんなで思っていました。

各グループのディスカッションのようす

参加者アンケートの結果や、ファシリテーションAIについて

ワークショップのアンケートは、約半数の方に答えていただきました。結果はとても興味深いものでしたので、一部をご紹介します。

Q. データが感覚と合っていましたか?

回答のうち80%が「合っていた」または「まあまあ合っていた」と回答されました。感覚に合う精度で見える化されていたことがわかります。一方、「あまり合っていなかった」と答えた方の中にも、「肌感覚との違いがあったが、それがよかった」というコメントを書いた方もおられました。感覚と合っていないことが、新しい気付きになったのかもしれません。

Q. このデータを使うと、参加者やファシリテーターの行動改善ができそうですか?

参加者の立場でも、ファシリテーターの立場でも、すべての方が「できそう」または「まあまあできそう」と回答されました。客観的な評価ができることが、行動改善に繋がるという印象を持たれたようです。一方、「行動の変化はしそう。ただしそれが改善かはわからない」というコメントをされた方もいました。 実際、「みんなでバランスよく話す」ことを目標として会話をしたおたまじゃくし研究所での実験では、バランスを合わせることに気が行ってしまい、まとまった話ができないという弊害もありました。本人にあったフィードバックや、ファシリテーターのサポートがあるとより良くなるでしょう。

Q. このデータはどんなことに使えそうですか?

様々な利用例がある「振り返り」だけでなく「ファシリテーションの効果測定」や「ファシリテーターの育成」など、さすがファシリテーターが集まるFAJという回答がありました。

Q. 今後、AIにファシリテートしてほしいこと、して欲しくないことはなんですか?

ファシリテーションとAIがワークショップのテーマなので、ファシリテーターのみなさんに、「どんなファシリテーションはAIに任せたいか?あるいは任せたくないか?」を聞いてみました。

ファシリテーションを任せたいことには、「発話のバランスを取る」「タイムキープをする」「事実確認」などがありました。いずれも、大事だが機械的な仕事は任せたいのではないかと考えられます。 一方、ファシリテーションを任せたくないことには、「感情や価値観に関すること」「議論の場作り」がありました。いずれもファシリテーターの技術が強く関わる”人間的な”要素です。このあたりは、AIに任せるより自身のファシリテーションの専門性を活かしたいということなのだと考えられます。

運営者の感想

最後に、運営した4名の感想をそれぞれいただきました。

林加代子

ハイラブルさんのシステムを使わせていただいて、一番強く思ったことは、「メタ認知」でした。ファシリテーターの自分がどのようなタイミングで、話し合いに参加しているのか(影響度)も分かったことで、客観的に自分のファシリテーションのスタイルを見ることができました。(なかなかできなかったことです)
感情なく見せてくれるので、冷静に受け止められます。そこから、納得や気づきがありました。他のグループのデータを見て話し合いを予想するワークも、いろいろな気づきがありました。「このグループはこのあたりで合意したのでは?」「合意する前にはこんな特徴がでるんだね」「ファシリテーターはこの人では?」と推理するのも楽しかったです。議事録やメモなどの文字をみるだけでは分からないことが、データを見ればわかる!ことがありました。客観的であればあるほど、話し合いの結果にコミットしているのか?まで分かってきました。
とっても、楽しい経験をさせていただきました。ありがとうございました。

一木茂

当日はおもに、Zoomのブレイクアウトルームを作成するなどテクニカルスタッフとして参画いたしました。役割上、グループワークには参加できませんでしたが、Hylableを体験し、メインルームに戻って来た参加者の皆さんの顔がとても印象的でした。皆さん、好奇心旺盛なまるで子どものような顔をして戻って来られたのです。今までにオフライン(対面)においてHylableを使った話し合いを体験させていただいたことは何度かありますが、オンラインとの相性の良さ、可能性の高さを感じました。
今後も引き続き、Hylableの進化に少しでも貢献して参りたいと思います。

水本武志

はじめてのチームで運営したワークショップでしたが、会話の見える化というアイデアを楽しんでいただけて何よりでした。また、他の人の議論を推理するという仕掛けもみなさんが楽しんでくれていたようで、やった甲斐があったなと思いました。これを元にいろんなワークショップが実現できそうだなと思ってワクワクしています。ありがとうございました!

白松俊

私も企画者ながらワークに参加させてもらいました。私の場合、最初しゃべり過ぎで後半控え目というパターンでしたが、同じグループの方から「ファシリテーターとしては理想的な気がする」というお褒めの言葉を頂きました。実は、最初自分が喋り過ぎているのがデータで見えてしまって、慌てて控え目になったらそれが功を奏しただけだったのですが、結果オーライです。もしかしたら、「ファシリテーターらしい発話パターン」の類型化ができるのかもしれないですね・・・研究してみたくなりました!



こんなワークショップを自分たちも受けたい!または自分たちでやってみたい!と思われた方は、 当社の問い合わせページまたは、FAJ中部支部までご連絡ください。 Hylable は他にも ロールプレイや 1on1 の研修など、様々な場面で使えます (研修の例はこちら組織の分析はこちら) お気軽にお問い合わせください。


この記事を書いたメンバー

水本武志

ハイラブル株式会社代表。カエルや人のコミュニケーションの研究をしています。

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