【転載記事】Vol.5 オンラインとオフラインのコミュニケーション(後編)

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音の専門家が会議を解説するシリーズ「会議が見える〜音環境分析でコミュニケーションを豊かにする〜」。前回は、オンラインと対面の会議を通信路の観点から、双方が伝えることができる情報量を比較した。今回は、それぞれの利点を生かした会議の特徴を説明する。
対面会議とオンライン会議を比べる:沈黙

次に、対面会議とオンライン会議を情報がない状態、つまり「沈黙」で比較します。

対面会議では、情報は必ず伝わりますし、ミュートはできません。誰か沈黙しているときは意図的に発言していないといえます。そのため、周りの人は誰かが沈黙しているときは、「考え込んでいるのかな」「気分を害したのかな」と、相手の意図を探ることができます。

逆にオンライン会議では、沈黙の意味が曖昧になります。誰かが沈黙しているときは、ただミュートをしているかもしれないし、通信が止まっているかもしれません。そのため、誰かが沈黙していても、それが意図的か通信の不具合なのかわかりません。

オンラインミーティングのコツとして「できるだけカメラをONにして相槌を大きくする」という方法は、この信頼性の低い通信路を顔の動きで補完できるという点で効果的だと言えるでしょう。

対面会議が合う場面とオンライン会議が合う場面

試作品など実際の生のモノを見ながら話せるから対面会議が良いという意見があります。逆に、画面共有もできるし、移動が不要なのでオンライン会議が良いなど、2つの会議スタイルには当然いろいろな異なるメリットがあります。

ここまで考えてきた通信路の切り口を使うと、仮に同じ「会話するだけ」の状況を前提にしても、適切な場面は大きく異なります。

【オンライン会議が合う場面】 オンライン会議では、情報を節約するために、本題に集中できる点がメリットです。そのため、「議題が決まった議論」には有効でしょう。文書を共同編集できるツールで先に議題を共有しておくのも、情報の節約に効果的です。

たとえば、ある大学院生は「研究経過を指導教員に報告するときは、まとまって議論の報告やアドバイスをもらえるのでオンラインの方がよい」と話していました。ある新入社員は「怖い上司と話すときは、オンラインの方が話しやすい」と話していました。これは、上司の迫力や威圧感の情報が消えるからかもしれません。

【対面会議が合う場面】 対面会議では、情報を無駄遣いできる点がメリットです。たとえば互いの人となりを知るための雑談は有効でしょう。あるいは、本題と関係ないけど話しておきたい話題があるときも、対面がよいでしょう。さらに、「まだアイデアが煮詰まっておらず明確ではないが、話しておきたい話題」なども、広い帯域をふんだんに使いながら話したほうがよいかもしれません。

企業のオフィスでは偶然な会話や立ち話などの「インフォーマル・コミュニケーション」が重要です。これは、物理的な空間だからこそできる “無駄な” 会話であり、こうした会話のおかげで組織の活性化や、組織の学習能力に関係するトランザクティブ・メモリー(誰が何を知っているかを把握すること)が向上していくといえるでしょう

対面会議とオンライン会議の目的を持った使い分け

このように、対面会議とオンライン会議は特徴が大きく異なります。そのスタイルに合わせて、情報の節約や、逆に無駄遣いすることで、その特徴に合った豊かなコミュニケーションをすることができるでしょう。

ニッキンONLINEプラス2022年10月3日掲載 (リンク)

この記事を書いたメンバー

水本武志

ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。最近生物研究プロジェクト Project Dolittle も始めました。

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