本記事は、ニッキンONLINE PREMIUMで連載中の記事の転載です。
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前回は、発話の機会が均等になることで多様なアイデアが出ることと、そのためのゲームとしてバランスゲームを紹介しました。しかし、「そうはいっても多く話してしまう」「必要だから多く話している」と思われた方も多いのではないでしょうか。
かくいう私も立場上、社内の会議では、他者より多く話していますが、そこそこにブレーキをかける工夫をしています。それが「発話予算」という考え方です。
アイデアはとてもシンプルで、「少なくとも発話量ランキングを2位にする」ということです。話が長いのは諦めて、せめて1位は避けようという考え方です。見方を変えると「現在発話量が1位の人との差を埋める時間までは話せる」ということになります。例えば、他の人がこれまで10分話していて、あなたの発話量がまだ7分だったら、まだ3分は話せるということです。逆に他の人に短く質問し話を振ってみて2分話したとしたら、さらに自分ももう2分話すことができるのです。

つまり、他の人(複数人いるときは自分以外で一番多く話した人)と自分の発話量の差を「予算」だと捉えて、その予算分だけ発言するのです。他の人が話せば予算が増えるので、また話すことができるという考え方です。
とてもシンプルなルールですが、行動に与える効果は大きいはずです。当社では、自社製品の Hylable Discussion でこのようなグラフをリアルタイムで表示しているので、常に「あと何分なら話せるな」とか「もうちょっと話したいから、この人に話を振ってみよう」といった行動をするようになります。さらに、「はい」や「いいえ」で終わっては自分の予算が増えないので、長く話したくなるような、その人の得意な話題を持ち込んで、オープンクエスチョンをするのが一番効率的です。
まるで意味のないルールに縛られているようですが、これを外からみると「簡潔に発言し、他のメンバーに、その人が得意な話題を振ってくれるファシリテーションができるひと」になるのです。こんな人が会議にいたら議論が盛り上がりそうに思えませんか?
ツールが無くてもアナログな方法で発話予算は使えます。ノートを用意して、それぞれのメンバーが発言した回数を数えていくのです。

例えば上記のように、メンバー4人の発言ごとにカウントします。この場合、一番多く話をしている鈴木さんの分まで予算を持っているということになり、あと5回は発言できます。
この発話予算のアイデアを使って、アイデアが生み出される多様性のある会議を作ってみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いたメンバー

水本武志
ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。最近生物研究プロジェクト Project Dolittle も始めました。