【転載記事】Vol. 14 1on1の効果的なやり方と、定量的に改善する方法とは?

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社会環境が複雑になる中で企業活動におけるコミュニケーションの重要性は増加し、その質の向上が求められている。一方で、テレワークの普及や働き方の変化に伴い、会議・議論・相談といったコミュニケーションは、これまでの対面中心からオンラインやその混合にまで多様化しこれまで通りの運営は難しくなっている。シリーズ「会議が見える〜音環境分析でコミュニケーションを豊かにする〜」のVol.14では、上司と部下の1対1のコミュニケーションを行う1on1(ワンオンワン)と、その状態を定量化する ST(Student Teacher)分析について紹介する。
1on1 とは
1on1 とは、主に経験のある人(上司)と比較的経験の少ない人(部下)が1対1で会話を行うことです。ヤフーの1on1講座が有名ですが、国内外のさまざまな企業で行われています。
米国で経営学に関する雑誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』の 1on1 に関する記事(Steven G. Rogelberg, “Make the Most of Your One-on-One Meetings”)でも、1on1 は重要で、メンバーの退職リスクが上がるということが指摘されています。記事で紹介される効果的な方法は次のとおりです。
① 1on1 の頻度

1on1 の頻度は、チームの状況に合わせて以下のように実施するよいでしょう

・1週間に1回、1回あたり30分

部下の経験が浅かったり、配属されて日が浅いときは高い頻度で行うのがよいでしょう。さらに、上司も新たに配属されたときは、関係を構築するために高い頻度で行うのがよいでしょう。

・2週に1回、1回あたり40〜60分
一方で、チームが10人以上のときは、負荷がとても大きくなるので、頻度を下げるのがよいようです。あるいは、チームメンバー同士の 1on1 を行うのも効果的です。
② 1on1 の内容

1on1 の内容については、大きく2つの方法があります

・共通のメモを残す方法

上司と部下でメモを共有し、毎回、前回の振り返りをしながら仕事での困りごとやキャリアプランについて話をしていく方法です。さらに1on1 の前に準備として話したい内容のリストを作成しておきます。

・その場で質問をしながら会話する方法

広めの話題やキャリアプランについてその場で色々と会話しながら、話し合いをする方法です。質問には、以下のようなものがあります。

  • ■最近の優先順位の高い仕事や懸念はある?
  • ■なにか上司が知っておいた方がいいことある?
  • ■これまで一番良かった上司ってどんなタイプ?
  • ■あなたの将来キャリアプランに一番関係する今の仕事ってどれ?
運用上気をつけること

どの方法をとるにしても、以下のような運用に気をつけるのがよいでしょう

  • ■心理的安全性
    部下に、「上司が自分の話を聞いてくれている、リスペクトされている、信用されている」という感覚を持ってもらうことが重要です。
  • ■エネルギーと楽観
    感情は相手に移ることが知られているので、上司は楽観的でエネルギッシュな状態で 1on1 に望むのが重要です。
  • ■話すよりも聞く
    著者の研究によると、だいたい部下が 50~90%話してもらうのが理想なようです。

この中でもとくに、「相手の話をどれだけ聞けているか」ということをメタ認知するのはとても難しいスキルです。そこで、教育工学の分野で紹介されているST分析を紹介します。

ST分析で 1on1 を定量分析する
ST 分析とは、Student Teacher 分析の略で、授業中に先生と生徒のどちらが中心にいたかをシンプルに可視化する分析方法です。 やり方はとても簡単で、次のステップで記録をしてグラフ化するだけです。
  • (1) 30秒ごとに、「先生と生徒のどちらが中心の活動だったか」を判定し、 先生が中心なら Teacher の T、生徒が中心なら Student の S と書く。
  • (2) マス目状の紙を用意し、時系列順に Tなら右に、Sなら上に1マスずつ進んでいくような折れ線を描く
これを使うと、授業全体を折れ線で表せます。この折れ線形状から授業全体の進め方を可視化でき、以下のようなことが分かります。
  • ■ 横に寝たグラフなら先生中心
  • ■ 縦に起きたグラフなら生徒中心
  • ■ 斜めに上がっていくグラフなら先生と生徒が交互に中心に入れ替わり
このST分析を 1on1 の分析に使うことができます。 30秒ごとに、上司が中心なら横に、部下が中心なら上に1マスごとに動かして行きます。
この形状から、部下と上司のどちらが中心だったか、あるいはいつから上司が中心的に話したのかをグラフの形状だけで簡単に確認することができます。
ハイラブルの過去の論文(*)では、ハイラブルの技術でこうしたグラフ化を自動で行い、大学院生と中高生の研究メンタリングがどのように進んでいたかを分析しました。その結果、目的によって、中高生の研究のモチベーションを聞き出したいときは縦型の形状に、研究の方法をしっかり伝えるときは横型の形状になっているということを明らかにしました。
(*) 柳楽浩平, 水本武志『大学院生による中高生に対するオンライン研究メンタリングの定量分析』日本教育工学会春季全国大会, 2023.
みなさんの 1on1 でもグラフで見える化して、客観的に振り返ってみてはいかがでしょうか。
ニッキンONLINEプラス2024年3月24日掲載 (リンク)

この記事を書いたメンバー

水本武志

ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。生物研究プロジェクト Project Dolittle もやってます。

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