現代のビジネス環境において、コミュニケーションの質の向上は重要である。とくに、対面やオンラインが混ざりあった環境で会議・議論・相談といった日々のコミュニケーションを効果的に行うことの重要性はますます増している。シリーズ「会議が見える〜音環境分析でコミュニケーションを豊かにする〜」では、これまで7万人以上の話し合いを分析してきた音の専門家が会議を解説する。Vol.18 では、人間から視点をずらして、動物が行うコミュニケーションについて紹介する。
本記事は、ニッキンONLINE PREMIUMで連載中の記事の転載です。
※媒体社の許諾のうえ転載しております。
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言葉を話すのは人間だけ?
「言葉を話せる動物は人間だけだ」という考え方は古くからあり、少なくとも古代ギリシャの哲学者アリストテレスもその1人でした。確かにオウムが人間の言葉を真似ても、クマが相手を威嚇する行為をみても、コミュニケーションのような高度なことはやっていないと思っている方も多いのではないでしょうか。
一方で、物語の中では人とコミュニケーションをする動物の話は多くあります。その中でも児童文学として知られるヒュー・ロフティングの『ドリトル先生』シリーズは映画化もされており有名です。原作ではドリトル先生は動物と話せる獣医で、通常の獣医と違って“動物本人”に症状を聞けるので、腕の良い獣医として動物たちに人気です。物語では、ドリトル先生が動物達と会話しながらさまざまな問題を解決していきます。スケールもかなり大きく、たとえば『ドリトル先生の郵便局』では国の郵便システムまで作ってしまいます。
ドリトル先生の原作の挿絵 プロジェクト・グーテンベルグより引用(リンク)
ドリトル先生は、なぜ動物の言葉がわかるようになったのでしょうか?ファンタジー小説のように「動物と話せる不思議な力で話せている」と思うかもしれませんが、実は違います。ドリトル先生は、動物のしぐさや鳴き声の観察によって話せているのです。こうした方法は実際の動物研究でも行われているので、ドリトル先生はファンタジーというよりむしろSF (サイエンス・フィクション)と言えるでしょう。
言葉を話す動物たち
ドリトル先生は架空のおとぎ話に過ぎないと思われるかもしれません。しかし、動物が高度なコミュニケーションをしているということはさまざまな研究から知られています。
最近話題になったのはシジュウカラです。シジュウカラたちは多くの単語を組み合わせて「ヘビが来た」や「タカが来た」などの意味を伝え合っているというのです。(シジュウカラの研究は、たとえばシジュウカラの言葉・文法を証明。鳥と話すことはできるのかという記事がわかりやすいでしょう)
シジュウカラに限らず、動物のコミュニケーションに関する研究は数多くあります。たとえば、プレーリードッグは近づいてきた敵の高さや色・速度まで伝えている[1]、あるクマが発見した餌をとるテクニックが他のクマ達にも伝わっていた[2]、ということが知られています。
動物の言葉を理解するには?
ドリトル先生の世界はあながち架空のおとぎ話でもないかもしれないのです。人間以外もコミュニケーションをしていると考えると楽しくなってきませんか?
動物のコミュニケーションを理解するには観察が大事です。観察は、専門家でなくても、膨大な時間をかけなくても可能です。動物の声に耳を傾けてみましょう。そこで同様な鳴き方を繰り返しているか、パターンを探してみると法則が見えてくるかもしれません。
通勤や週末に外に出かけたときの気分転換や、家族と外に出かけた時などに一緒に耳を傾けてみるのはいかがでしょうか。
まとめ
さまざまな研究が示すように、多くの動物たちはただ鳴いているだけでなくコミュニケーションを行っています。そこで、私たちは人間だけでなく動物たちのコミュニケーションを明らかにするプロジェクト プロジェクト・ドリトルや、日比谷公園で音声を計測するプロジェクトを進めています。動物の研究で得られた知見を活用して人間の会議をより深く理解する研究も進めたいと考えています。
参考文献
- [1] エヴァ・メイヤー『言葉を使う動物たち』柏書房, 2020
- [2] ブランドン・ケイム『動物の言葉 : 驚異のコミュニケーション・パワー』, 日経ナショナルジオグラフィック社, 2020.
ニッキンONLINE PREMIUM 2024年8月25日掲載(リンク)
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この記事を書いたメンバー
水本武志
ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。生物研究プロジェクト Project Dolittle もやってます。