本記事は、ニッキンONLINE PREMIUMで連載中の記事の転載です。
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管理職の課題は、自分の業務を進めるだけではありません。近年は、チームメンバーとの円滑なコミュニケーションを確保するスキルと、事実に基づいて判断を行うデータリテラシーのスキルが重要になってきています。お客さまから、この2つを育成したいという相談をうけました。
コミュニケーションについては、社外の関係者だけでなくチームメンバーとの円滑なコミュニケーションも重要であり難しいスキルです。1on1 を実施する会社も増え「傾聴」が求められることも多いでしょう。相手の話を聞くことは、単に静かに聞くだけではなく、相手が話しやすい環境を作り出したり、答えたくなる問いかけをする積極的な行動が重要です。さらに、相手に情報が足りなかったりアドバイスが必要な状況では、自身から率先して話をすることも必要です。
それには会話をしながら自分や相手の状況を俯瞰する社会的メタ認知が必要ですが、これはかなり難しいスキルです。したがって、研修などのトレーニングが有効になります。
データリテラシーについては、最近の複雑な社会環境ではデータを確認し、仮説を立てて行動するリテラシーが不可欠です。もちろん経験やカン、情熱はとても重要ですが、関係者や状況が増えてくると人が把握できる複雑さを簡単に超えてしまいます。また、多様な人々を説得する上ではエビデンスに基づく判断は欠かせません。
このトレーニングをしようにも、すぐに手に入るデータは小規模な仮のデータ(トイデータともいわれます)であり、主体性を持って仮説を立てたり行動を変えたりする経験を得るのは難しいのが現実です。一方で、事業そのものに関するデータを研修のためとはいえ外部に出すのは困難です。したがって、何らかの実感の湧く課題に取り組むことが有効となります。
そこでハイラブルの会話の可視化技術を組み込んだ新しい管理職研修を実践しました。
内容は下記のとおりです。
- 課題となる部下の情報が書かれたカードが渡されます。そこには、部下の特徴や抱えている課題などが書き込まれています。
- これをもとに、参加者同士でこの部下との面談をどうするかについて話し合いをします。何を聞いた方がいいか、コーチングでいくかティーチングでいくか、といった戦略を考えます。
- この戦略をもとに、部下とロールプレイをし、会話データを記録します。
- そして、このデータをもとに、戦略通り面談ができていたかを振り返ります。
- 1~4を繰り返します。
これまで、最後の振り返りは研修参加者同士でフィードバックしていたのですが、データを組み合わせることで、エビデンスに基づく議論ができるようになりました。
この研修は、コミュニケーションとデータリテラシーを同時に育成することができます。
まず、グループで部下と面談するため方針を立てることで「面談を事前に考える」練習ができます。また、方針通りに面談ができたかを振り返ることで「戦略通り自分をコントロールする」練習にもなります。
さらに、この振り返りをデータにもとづいて客観的に見ることで、自分の行動をデータで振り返り、そのデータに基づいて改善点を判断し、実際に行動を変える、という練習になります。
これは、仮想的なトイデータではなく、データに基づいた判断を行うためのデータリテラシーを身につける練習になるのです。
データの収集は、会話の分析以外にもビデオを撮影して振り返るなど色々な方法があるので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いたメンバー

水本武志
ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。生物研究プロジェクト Project Dolittle もやってます。